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「時間を忘れて滞在できる空間」を設計する
liminariasはVRプラットフォーム・VRChat向けに制作した個人制作のワールドです。
「没入感のある空間を作りたい」というシンプルな動機から始まりました。
でも最初にやったのは、ビジュアルの参考を集めるところではなく、プレイしていく中で感じていた「没入を壊すもの」を考えることでした。
作者自身もVRChatをかなり楽しんでるプレイヤーです。
しかしながら大音量の環境に長時間いると疲れやすい体質で、割と疲れずにVRCを楽しんでいる方が多い中、私のような人はかなり少数派だと思っています。
(なんとコレに加えてVR酔いも(!)します。長時間ぶっ通しでプレイできる人がめちゃくちゃ羨ましいです…)
でも逆に言うと、「綺麗だけど長くはいられない空間」への感度が自分は人より少し高いということにもなる…?
その疲れやすい自分を基準にして、来るユーザーがちょうどよく過ごせるレベルを目指したのが、このワールドの音響設計です。
VR空間のワールド制作は、ビジュアルから入る人が大半だと思います。
しかし、空間と音が一致していないと違和感があり、BGMや環境音が大きすぎると、隣の人と話せなくなる。
いかに見た目が綺麗な空間を目指しても、長く滞在できないならVRを最大限に楽しみきれずもったいない!と考え、
まずは空間音響から逆算して設計を始めることにしました。
コンセプトは「雨と音楽」
このワールドは、ユーザーの長時間の滞在と快適な交流を最優先に考えています。
雨音と音楽と空間って、私は聴覚的な相性がいいように感じています。
雨音は空間を満たしつつも音楽の邪魔をしないし、プレイヤーから流れる動画の音楽は場の空気を作りながら会話の邪魔をしない。
この三つが干渉しあわずに共存できる構造を、コンセプトの段階で確保できたのが大きかったです。
空間のモチーフを「海上建築」にしたのも、ここからの逆算です。
非現実的な舞台なら、雨音がずっと鳴っていても違和感がない。
VRだからできる、フィクションだから考えられうる、音響の自由度を上げました。
音に場所をもたせる
まずは空間全体のモデリング。Blenderを使用して骨組みを制作し、Unityに移行。
まずは建物の四方に異なる雨音の音源を配置しました。(以下緑丸箇所)
大まかに言うと、右から聞こえる雨と、左から聞こえる雨が違う、という状態です。
現実の雨って、場所によって聞こえ方が微妙に違いますよね。
それをVR空間の中で再現することで、「自分が今どこにいるか」を耳からも感じられるようになる。これ(いわゆる定位感)を重視しています。

視覚だけじゃなく、音でも空間を体感できる状態を作ることで、現実感がぐっと上がります。
「なんかリアルだな~」と感じる瞬間の、意外と大きな部分を音が担っていると思っています。
私が一番得意としているビジュアル面のコントロールだけではなく、音でも空間を体感できる状態を作りたかったことが実装できました。
全体的な音響周りはFradolさんのnoteを主に参考にさせていただき、プレイヤーから流れる音楽の音響にも応用しています。(以下赤丸箇所)
VRChatワールド作製時の音響設定について|Fradol

BGMのボリューム・音の響き方の調整が一番時間がかかりました。
音楽を楽しみながら、隣の人と普通に話せる。そのバランスが出るまで、何度も聴いたりしていました。
自分が疲れない音量のバランスを基準にしたのが、結果的にちょうどよかったです。
色で、リラックスさせる
空間全体は青を基調にしています。
非現実的なデザインのまま、長時間いてもらうには、緊張感を抜く必要がある。
没入させながら、疲れさせない。そんなバランスを色に担ってもらいました。
最後に空間全体の調整・ポストプロセッシング等をUnityで行いました。
最終的な完成形はコチラ。

公開後の影響
そしてワールドを公開しました。
公開後1週間で約24,000回の訪問がありました。(2026/05現在は約60,000回)
数字よりも何より嬉しかったことがあり、公開後は多くのVRChatプレイヤーの方々による多くの写真がX上で上げられました。
投稿されたワールドの画像(Xに遷移します)
撮りたくなる瞬間がワールドに足を運んでくれた方の中で生まれていたように感じ、それが制作を終えてから一番の手応えでした。
このワールドは現在もVRChat上で公開されています。
公開してそこで終わりではなく、誰かが今日も訪れて、時間を忘れて過ごして、また知らないところで新しい楽しみを見つけているかもしれない。
日常に溶け込むことが、私の考える完成に近いものと考えます。
ちなみにVRゴーグルがなくてもVRChatはデスクトップから楽しめます!
記事を読んでから、始めて行く方もいつも訪れていただいている方も是非入ってこだわりを楽しんでいただければ嬉しいです。
tsumugi.は今回のようなVRワールドの企画・制作まで、クライアントワークとしてもお手伝いできます。
「VRに参入してみたいけど、どんな構成にすれば…?」という段階からでも、まずはお気軽にご相談ください。
- OUTLINE
- liminarias - VRChat World VRChatワールド・紹介動画を制作しました。
- CREDITS
World Author, Movie: gin_iro
Special Thanks: Lemm, queue
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